Ns Note

「たのしい」「おいしい」のライフログ

Life

旅立つ友人に向けたオマージュ

2014/03/01

3月31日の日曜日の昼下がり、家族で自転車に乗って出かける私に一本の電話が入った。
iPhoneの着信画面には友人の彼の名前が表示されている。

『今日は何だろう』

私は思わず苦笑した。
彼からの電話はいつも突然だ。
前の電話は『転職することにした』だった。

『もしもし』
「ナミちゃん久しぶり。今大丈夫かな」
『少しなら。どうした?』

いつもと変わらない切り出し。
しかしながら、この日の要件は私の想像をはるかに上回る話だった。
そして彼は明日の約束でも取り付けるように私にこういった。
「急なんだけど、セブ島に移住することにしたんだ」
balicasagubeachth_

Sponsored Link


彼と出会ったのは今の会社に入ってからだ。

3つ年上の先輩だった彼は、気さくで飾らない性格で、いつの間にか良き友人となった。
休みの日にはサーフィンに行き、仕事が終われば酒を飲んだ。
仕事の話は全くしなかったが、互いの夢や自分の未来については良く語った。

私は以前職場で外国人呼ばわりをされていた。
見た目ではない。
YesかNoか、白か黒かをはっきりさせたい性格のせいだ。
「日本人ではなくアメリカ人だ」という面白い例えだった。

だが、私からすれば彼こそが外国人だ。
見た目も性格もラテン系の血が流れているとしか思えない…。
どうして、こうも陽気でポジティブなんだろうと羨ましくなる。

私も少しばかり年をとり、少しだけ遊びよりも仕事に傾ける情熱が増えた。
仕事に関わる時間が増え、仕事のことを考える時間が多くなっていく。
ほとんどの人がそうであるように、仕事と家庭の往復という生活にシフトしていった。

仕事で認められ、家庭が一番大事な私はそんな時間も楽しかった。

そして、友人と過ごす時間は減って行き、彼と会う時間も少なくなっていった。

それでも彼は相変わらずマイペースで自由な生活を送っていた。
結婚して波乗りとダイビングのために東京から平塚市に移住した。
そこにいきなり新築の一戸建てを購入し私を驚かせた。

子供が小さくても飛行機に乗せ海外旅行は欠かさない。
そして自分のやりたい仕事を追い続け会社を辞めた。

久しぶりにあって海に入り波を待ってお互いの近況の話をする。
私の話は仕事の話や子供の話が主だ。
そんな時でも彼は今までと変わらない楽しい話をする男だった。

彼の行動は時に羨ましく、時に理解に苦しんだ。

だから私はいつも彼の妻はスゴイ人だと思っていた。
誰に聞かれても言ったことは無いが、尊敬する人物は彼の妻だ。
彼女がいるからこそ彼は彼なのだろうと思う。

そんな彼からの電話は「セブ島に移住する」だった。
さすがの私も面食らって、矢継ぎ早に質問を投げかけた。
『この前決めた会社はどうするんだ?』
『移住っていつから?』
『家はどうするの?』
『子どもたちはどうするんだ?』

そして彼は普段通り、当たり前のように受け答えをしていく。
「会社はもう辞めたよ」
「来週辺りに出発するつもりなんだけど」
「家はもう売った」
「向こうの学校に入学させて英語をしっかり学ばせようと思ってる」

私はさすがにあっけにとられて言葉を失った。
家を売ったお金と今までの貯金を崩さないようになんとかする。
向こうで仕事するから大丈夫だという話だった。

『家は売ったって、今は実家にいるのか?』
「平塚の友人宅で居候している。でも、そろそろ出て行くよ」
「セブ島って知ってる?フィリピンにあるんだけど」

私は思わず声を出して笑った。
セブ島の講義は今じゃなくて良いだろうと。

ちなみに居候させている平塚の友人も変人だ。

『飛行機は決まっているのか』
「希望した日が取れなかったんだ。来週辺りには行きたいと思う」

会って詳しい経緯を聞きたかったが出発までに時間がない。
忙しそうだし、お互いの都合は合わなかった。

考えてみると別れというのはいつも唐突だ。
恋人に別れを切り出されたり…
親しい人が亡くなったり…

心の準備ができていないときにやってくる。

『そろそろ行かないと』
「分かった。また電話するよ」

私は顔をほころばせながら電話を切った。
恐らく出発前に電話をするのが最後になるだろう。
それなのに、まるで
『いつでも会えるだろう』
とでも言うような切り方だった。

彼なりに気を使っているのはわかっている。
やはり彼は優しくて楽しい男だと思う。

今まで彼からは色々なことを教えてもらった。
私の人生に最も影響を与えたのは彼なのかもしれない。
私は彼に何か与えることができたのだろうか?

何年か経って彼に会った時、彼は何て言うのだろう。
何事もなかったように普通にあいさつを交わすのだろうか?

きっとセブ島の面白い話をたくさんしてくれるだろう。
その時のことを楽しみに帰りを待っていようと思う。

そして遅まきながら…
帰ってきた彼に何かを与えられる男になっていたいと思う。
それは彼のためではなく、
自分自身が成長した証になるのだから。

別々に過ごしていた時間を
『俺も負けてないぜ』と言えるよう。

何年か経って彼に会えた時…

この話の続きを書きたいと思います。

あとがき


長文失礼しました。
もう会えなくなる友人に向けたメッセージです。
きっと彼がこれを読むことはないと思います。
それでも私の思いを書き記したいと思いました。

今まで本当にありがとう。
ただ感謝の気持ちでいっぱいです。

最後まで読んでいただきありがとうございます。
RSSの登録はこちらからどうぞ

follow us in feedly

気に入った記事はシェアして頂けると嬉しいです!

-Life
-